東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)187号 判決
一 特許庁における本件審査、審判手続の経緯、本願意匠の要旨および本件審決の理由の要旨についての請求原因第一項ないし第三項の事実は、すべて、当事者間に争いがない。
右争いのない事実によれば、本願意匠は、別紙図面記載のとおり、ラジオ受信装置を内蔵した台上に、自由の女神を象つた像を載置し、腕部に伸縮自在のアンテナを収納し、台部正面には楕円状のスピーカー孔を設け、肩部を円弧状とし、台部の上部前部の左右にダイヤルの一部を覗かせたラジオ受信機の形状および模様の結合にかかるものであるところ、成立に争いのない甲第一号証(本願意匠の登録願書および図面)、同乙第一号証(輸出アンチモニー工業協同組合作成名義の同組合登録第八六九〇号の物品についての証明書および写真)、同乙第四号証の一、二(世界地理風俗大系第一九巻の表紙および第二〇七頁)および弁論の全趣旨によれば、本願意匠における自由の女神像は、アメリカ合衆国ニユーヨーク港所在の世界的にきわめて著名な自由の女神像を象つたものであること、一方、本件審決が引用した輸出アンチモニー工業協同組合の登録にかかる登録第八六九〇号の飾置物(以下引用飾置物という。)は、本願意匠の登録出願日(昭和三四年一〇月二〇日)以前の日である昭和三三年一一月頃国内に公然知られるにいたつていたものであるところ、この引用飾置物の女神像も、本願意匠におけると同様、右自由の女神像を象つたものであること、本願意匠の女神像と引用飾置物のそれとの間には特段の差異が認められないこと、本願意匠においては、女神像の台部は女神像の高さを五とすると、正面幅、奥行、高さが順次ほぼ三・六、三・一、三の割合となつており、台部の上部には上に行くに従つて順次僅かずつ小さくなる台部横断面と相似形の低い段部三を含み、台部の下部には台部よりやや大きい同様相似形の低い底部を有すること、引用飾置物の台部は、ほぼ女神像と同じ高さであり、その正面幅が奥行より幾分大きくみえる断面四角形で、上部に行くに従い概して小さくなる段状をなしており、台部の正面幅には、もつとも大きいところで女神像のほぼ三分の二であることが認められる。
二 ところで、意匠を現わすべき物品は、本願意匠においてはラジオ受信機であつて、引用飾置物とは一応異なるけれども、意匠が現わされる物品としてのラジオ受信機が一般に飾置物としての面を具有することは顕著な事実であり、一方、世界的にきわめて著名な自由の女神像をそのまま象つて飾置物に利用するようなことは、きわめて広い活動分野をもつこの種近代的な飾置物をつくろうとするほどのラジオ受信機関係当業者であれば、容易に想到しうることであることが、引用飾置物の例示に徴しても、十分認めうるところであるから、本願意匠において、右自由の女神像に特段の意匠的考案があるものと認めることはできない。
また、本願意匠における台部についても、視覚を通じて得られる外形全体としての印象は、特別のものがあるとは認めがたく、台部の上部前部左右に僅か覗かせたダイヤルの一部、台部正面の楕円状のスピーカー孔などの点を考慮しても、なお一般常識的の域を脱せず、さらに、女神像とこの台部とを全体として観察しても、右のような台部の大きさその他の外形は、女神像の形状模様に普通に応じたものと感ぜられ、量感その他として何らかとりたてたものがあるとは認めることができない。女神像のあげた腕部に収納されたアンテナにも、本願意匠の全体からみて特別、趣味感を起こすに足りるものがあるとは認めがたく、ここに意匠の考案の存在を認めるに足りない。
原告が本願意匠と類似の事例について登録された意匠として提示する成立に争いのない甲第五号証の二、同第七号証ないし第九号証も、これをもつてただちに本件における以上の判断を左右しうべきものではない。
三 以上のとおりであるから、本願意匠をもつて意匠としての特殊の形状および模様についての考案をしたものとは認められず、旧意匠法第一条に規定する意匠の考案とはいいえないとした本件審決には、原告主張のような違法の点が認められず、これを理由にその取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえないから、これを棄却する。
〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。
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